【新旧比較】ARC’TERYX ベータジャケット 2024新モデルを旧モデルと比べつつレビュー!【賛否が分かれる新作】
2024年にリニューアルされて登場したアークテリクスの売れ筋人気モデル、ベータジャケット。
素材の刷新やデザインの変更など、かなり大きなリニューアルとなりました。
発売前にYoutubeで投稿した動画でもお伝えした予想通り、今作はかなり賛否が分かれるモデル。
1つ前置きというか前提として、「賛否が分かれる」ということを全くネガティブに捉えていません。
言い換えれば、特徴や向き不向きがはっきりとしているということなので、ハマる人にはハマるし、合わない方もいる、という線引が明瞭になっただけの話だと思ってます。
その上で、自分にとっては魅力的なモデルだと感じました。
ただ、過去のベータジャケットに求めていた条件のまま購入すると、違っていたというズレが生まれるリスクはかなり高いのも事実。
今回は旧モデルと比較しながら、特徴・着用感・注意点などについて詳しくレビューしていきます。
新モデルのベータジャケットがハマるかハマらないか、わかるようにまとめていきます!
解説レビューはこちら
ファーストインプレッション
ARC’TERYX ベータジャケット|外観・スペック
ARC’TERYX ベータジャケットの基本情報
新モデル | 旧モデル | |
---|---|---|
重量 | 375 g | 300 g |
メンブレン | ePEメンブレン | ePTFEメンブレン |
表地・裏地 | [表]80Dナイロン [裏]Cニットバッカー | [表]30Dナイロン [裏]Cニットバッカー |
裁断・フィット | レギュラーフィット | トリムフィット |
フード | 非対応 | 非対応 |
ベンチレーション | なし | なし |
価格 | ¥68,200 | ¥68,200 |
アークテリクスで最も着回しの効くアイテムであるゴアテックス シェル。耐久性のある80デニールの表面素材と、軽量で強度が高く、PFCフリーのゴアテックスのePE(延伸ポリエチレン)メンブレンを使用。二酸化炭素排出量を減らしながら、持続力のある防水・防風性と透湿性を実現しています。C-KNITバッカーを採用して快適性を向上。薄手のStormHoodは引くだけで素早く調節ができ、カバー力を発揮しながら視界を妨げません。立体構造が動きやすさを、内蔵RECCOリフレクタが緊急時の捜索性を高めています。 新しくなった丈夫で軽量なゴアテックスePE素材でアップデートし、二酸化炭素排出量を削減。80デニールの表面素材により、重量を増やすことなく耐久性を高めました。
ー ARC’TERYX公式より
ARC’TERYX ベータジャケット|機能・特徴【変更点】
表地:30デニール→80デニール、生地は倍以上分厚く強度も向上
旧:30デニール / 新:80デニール
記事は旧モデルと比較して2.5倍以上分厚く、強度も大幅に向上しました。
80デニールと言えば、ベータARの色の濃い部分と同じ厚み(こちらはGORE-TEX PROですが)
本格的な登山やウィンタースポーツなどの過酷な環境にも耐え得るグレードです。
その分、重量は増えていますが、生地を倍以上にして重量が75g増に収まっているのは、評価できるポイントだと思います。
「しなやかさ」も向上しているそうで、そのためか、確かに厚くなった印象はあるものの、2.5倍以上になっているとは一見感じづらいかもしれません。
生地の質感
旧モデル | サラサラ系 |
---|---|
新モデル | ややツルッと(ツルッサラ) |
PFCフリーのePEメンブレンを採用したゴアテックスに変更
3層構造からなるGORE-TEXの中間層のメンブレン(性能に大きく影響)が、ePTFEメンブレンからPFCフリーの非フッ素系素材、ePEメンブレンに変更されました。
理由は環境への配慮という文脈です。
この「PFCフリー」という言葉、よく聞きますがイマイチ理解できていなかったので、この機会に調べてみました。
PFCとは?
PFC=Perfluorocarbon(パーフルオロカーボン)の略
撥水加工に使われてきたフッ素化合物のこと。
物質同士を結合させにくい性質を持つため、水や油、汚れを弾く機能に相性が良く、アウトドアウェアやレインウェアの耐久撥水加工に重宝されてきた。
なぜPFCが良くないの?
PFCに含まれる物質が環境や人体に悪影響であることが明らかになり、残留性の高さから「永遠の化学物質」とも呼ばれているそう。
たとえば、PFCに含まれる「PFOA(ペルフルオロオクタン酸)」は、残留性が高く環境規制を受けている。
アウトドアブランド共通の動き
特にアメリカでは厳しい規制が強まっていることもあり、自然に近いアウトドアブランドだからこそ、業界全体の大きな流れに。
- パタゴニア
2025年までにすべてをPFCフリーへ
2023年秋には92%がPFCフリーに - モンベル
2023年に全商品の約6割がPFCフリー - マムート
2022年夏に85%達成、2025年に100%を目指す
ePEメンブレンに変わっても、ゴア社の厳しい基準を満たす防水・防風・透湿の性能は担保されているとのこと。
ただ、どちらが上か、ということはわかりません。
仮に合格ラインが70点だったときに、80点なのか、90点なのかはわからないということです。
1つだけ確実なのは、GORE-TEXの基準を満たしているという時点で、20,000mmあれば嵐に耐えると言われる中、40,000mm以上とも噂されるほどの耐水圧は備えているということですね。
デザイン:ロゴはよりミニマルに、フードに文字入り
ロゴは「ARC’TERYX」の文字が胸からフード部分に移動し、始祖鳥のサイズが大きくなったことで、よりミニマルな印象になりました。
肌感覚ですが、「ARC’TERYX」の文字はあってほしい派のほうが7割以上な気がするので、この点は微妙に感じる方が多いかもしれません。
個人的には、遠目から見たときの始祖鳥の存在感が際立ち、ミニマルにアクセントが効いている気がしてけっこう好印象だったりします。
アークテリクスはフードの立体感やシルエットがよく評価されますが、後ろからもARC’TERYXの文字が見えるのはけっこういい感じです。
裁断・フィット:レギュラーフィット
旧:トリムフィット / 新:レギュラーフィット
新モデルでは、ややゆったり目のレギュラーフィットの裁断に変更されています。
シルエットの違いは上記の通り。
とくに、腕周りは違いがわかりやすい部分です。
2モデルを比べると、確かに着た感じも異なっており、個人的にはトリムフィットのほうがシュッとして好きでした。
レイヤリング時に窮屈さが緩和できるメリットはあると思いますが…
フロントポケット:裏地にプロシェル
細かい点ですが、フロントポケット内部の生地には、GORE® C-KNIT™ Backerとあわせて、プロシェルが使われています。
強度を落とすことなく、薄く軽量化させた高性能素材で、このあたりも、重量の増加を緩和させる変更点だと思われます。
携帯性:思ったよりサイズアップしていない印象
生地は2.5倍以上に、重量は75g程度重くなっているので、それなりに差はあります。
ただ、もっと携帯性は落ちてしまうかなと想定していたので、予想外に嬉しいポイントでした。
とはいえ、アウトドアシーンで使うような従来の「緊急用のシェル」としては重く大きく感じてしまうと思います。
ARC’TERYX ベータジャケット|機能・特徴【共通】
裏地:GORE® C-KNIT™ Backer
裏地には、旧モデルから快適性や着心地を高めるべく、4年以上の年月をかけて開発された
GORE® C-KNIT™ Backer
GORE® C-KNIT™ Backerとは?
裏地に極めて柔らかい丸編みのニットを採用したシェル素材で、体を動かした際の耳障りな音も軽減される。
これまでよりも複雑な編み方がされており、肌触りがやわらかく軽量。
トリコットバッカーと比べても、最大10%の軽量化を果たし、透湿値も最大15%向上しているそう。
GORE® C-KNIT™ Backerがもたらす快適性は本当にすごくて、ハードシェル特有のバリバリ感が大幅に緩和されています。特にゼータSLの頃のPaclite Plusなどと比べると圧倒的進化だと思います。
汗をかいたときのベタつかなさで特に差を感じましたね。
フード:ヘルメット非対応
フードは旧モデルと同じくヘルメット非対応。
そのままかと思いきや、フレームを支える芯みたいなものが、変わっている気がしました。
旧モデルはギシギシ鳴って、正直不快でした。
発泡スチロールとか苦手な人は嫌いなやつだと思います。
新モデルになって、この嫌なノイズが全くなくなったのは良かったです。
着丈:ベータ共通、お尻が半分程度隠れる長さ
着丈については旧モデルと同じく、Betaというライン共通。
「お尻が半分程度隠れる長さ」
最も汎用的と言われる着丈です。
ジップ:ビスロン&コイルファスナー
生みの親であり、今では業界のスタンダードとなっている、ARC’TERYXがきっかけとなって誕生した止水ジップ。
フロントにはエレメントと呼ばれるかみ合わせのパーツが比較的大きな止水仕様のビスロンファスナー。
合成樹脂の「コイルファスナー」に比べて、柔軟性では劣るものの、強度は高く防寒着や作業服などで採用されるタイプ。
ポケットは、RS™ジッパースライダー(コイルファスナー)
上部に雨を凌ぐような屋根部分はついていませんが、隙間なく締められるようになったことで、よりシンプルな外観になりました。
ARC’TERYX ベータジャケット|使用感・着用感
サイズ感
運営者の体型と着用サイズ
着用サイズ | S |
身長 | 177 cm |
体重 | 55 kg |
体格 | 痩せ型 |
ARC’TERYXのハードシェルは、レギュラーフィット・トリムフィットという裁断の違いに関わらず、毎回必ずSサイズを選択。
一方で、ソフトシェルの場合、XSを選ぶことが多いですね。
参考までに旧モデルユーザーのサイズ感
項目 | 1人目 | 2人目 | 3人目 |
---|---|---|---|
身長 | 171cm | 180cm | 175cm |
体重 | 58kg | 68kg | 75kg |
サイズ | XS | M | M |
備考 | ややタイト目 | 程よい | Sだとピタピタ |
レイヤリングによる見え方の違い
半袖インナーのみ
半袖インナー+アトムLT(化繊中綿)
半袖インナー+プロトンクルー+セリウムフーディ(ダウン)
半袖インナー
着用感
今回のリニューアルの中で、最もプラスに働いていると言えるのがシルエットの美しさ。
特にジップを開けた状態では、首周りの立体感・襟の立ち具合がダントツで美しく、かなり気に入っているポイント。
一方で重く分厚くなっている分、旧モデルと同じような軽やかさ、サラリと着られる感じは薄れました。
ARC’TERYXや薄手のハードシェルに慣れていない方なら、これでも十分軽くて羽織りやすい!と感じると思います。
ここも捉え方次第で、ペラペラ感がなくなって、しっかりジャケットを着ている感覚、という見方をすることもできるので一長一短です。
「音が気になる」「バリバリする」
といったご意見もありましたが、僕自身はほとんど感じませんでした。
むしろ、生地が80デニールのわりにしなやかで、不快感がかなり抑えられている印象です。
新モデルのベータジャケットは、首周りがタイトになっているので、厚手のウェアをレイヤリングする際には、若干窮屈に感じるのは気になった点。
ARC’TERYX ベータジャケット|メリット・デメリット
デメリット
- ロゴに「ARC’TERYX」の文字がない
その分始祖鳥がサイズアップしてミニマルに、ただ文字あり派のほうが多数だと思われる - 首周りの窮屈さ
特にレイヤリングするとキツめに感じる - 特有の軽やかさが減り携帯性も落ちた
「緊急用のシェル」という位置づけから変化? - レギュラーフィットになりゆったりしたシルエットに
シュッとスマートに見えるトリムフィットが好みだった
メリット
- わずか75gの重量増で、大幅な強度の向上としなやかさが担保されている
80デニールという生地の厚みでこの軽さ、快適性は冷静に凄い - forage(フォリッジ)のカラーがドストライク
ノルディックテイストな色味が最高 - 台風性・ジャケットのバタつきが大幅に改善
ロードバイクなど、風にさらされたりするシーンでの不安がほぼ解消 - サイズアップした始祖鳥ロゴと、後ろからも視認できるフードのARC’TERYX文字ロゴ
好き嫌いはあるが、個人的には気に入っている
ARC’TERYX ベータジャケット|肯定派・否定派の意見
ネガティブな意見
新型の方がゴアゴアして普段着としては使いにくい感じがしました。旧型の方がスタイリッシュかつ動きやすかったです。
新型は着用すると生地が厚くなったせいか、パリパリと音が大きくて驚きました。旧型の方がしなやかで柔らかな印象で好みです。でもこの新色はいいですね。欲しくなります。
ポジティブな意見
私も昨日近くのアークテリクスの店舗でブラックサファイアを購入しました。 やはりレギュラーフィットに変更され着用感が違いますね。 試着して購入して良かった。 80デニールでパリパリ感が増していい感じです。 裏地は前モデルと同じC-KNITなのに色濃くなってびっくりしました。 ゼータslのパックライトPLUSに似てるような。 だけどパックライトPLUSみたいにベタベタ感が無くいい感じです。 フードにRECCOリフレクタが内蔵されてますね。 私は町着のみの着用なのであまり必要ではありませんが
私も公式でこの色みて即決しました いい色ですよね!
ARC’TERYX ベータジャケット|レビューまとめ
- 軽さ・薄さよりもそこそこしっかりした着心地が欲しい
- 新モデルのシルエットに惹かれる
- タウンユースで着用することが多い
今回のリニューアルについて総括
【仮説】タウンユースを意識した仕様変更?
自分の中の仮説として、タウンユースを意識したリニューアルなのなかと感じました。
もちろん「タウンユースで80Dの生地は必要ない」という意見もあるかと思いますが…
そう感じたポイントは以下の通り
- ベータSL、ゼータSLの頃から、おそらくこのモデルの売上比率はタウンユースユーザーのほうが多いはず
- 過酷なアウトドアを意識したユーザーからすれば、ベンチレーションやヘルメット対応は欠かせない条件になる
- シルエットの向上やミニマルなデザインが街向けな印象
前提として、ARC’TERYXはいろんな動画や記事をみるかぎり、タウンユースとか使い方自体はユーザーに委ねるというスタンスなものの、一応山のブランドである、ということを主張しています。
【確定】モデル選びはより複雑にわかりづらくなった
選び方は間違いなく複雑化し、分かりづらくなったと断言できます。
以前は、SV>AR>LT>SLとグレード順にモデル名が付属していたものが、ここ2,3年で徐々に変わってきました。
おまけに、今回で言うとベータジャケットよりもライトウェイト(これまでのLT)のほうが軽く旧ベータに立ち位置としては近いものの、価格は高額になるという設定。
うーん、まったく優しくないですね(笑)
ストライクゾーンは狭まったが、求める条件がズレなければかなり良い
旧モデルがアウトドアからタウンユースまで、比較的幅広い層に刺さりやすかったのに対し、今回の刷新は一部の層に裏目に出る部分も間違いなくあるため、ストライクゾーンが狭まったように思います。
どちらかというと、デザインやシルエットなどタウンユースユーザーにハマりやすいモデルになっていると思うので、カラー展開含めて求める条件の合う方はぜひお試しください!